事例紹介
遺言無効を主張されないための予防策
ほかの相続人に、遺言を主張されてしまったら財産を遺言によって相続することになった相続人としては、そこで調停や訴訟に発展してしまいます。
そういったことを避けるための予防策はないでしょうか。解決例を見る
こいったトラブルに発展する前の予防策があります。それは遺言書を公正証書遺言で作成することです。
公正証書であることによって以下の効果があります。(1)遺言が無効になりづらい
(2)遺言書を紛失がない
(3)偽造を防止できる
(4)自分で書かなくて良い
(5)すぐに遺産相続を開始できる(1)遺言が無効になりづらい
直筆の遺言は様式が法律に従ってなければ無効になります。署名押印がないものは無効です。また夫婦連名や日付を定めていないものも無効です。例えば「8月吉日」といった表記も日付を定めていないとして認められません。また、訂正の仕方も面倒です。直筆の遺言は往々にして遺言書が無効もしくは一部無効になったケースがあります。公正証書遺言ではこのような様式的な無効はありません。
ただし、公証人は遺言能力の有無について正確に判断することはできません。公正証書遺言であっても、遺言能力が否定され、遺言が無効と判断された裁判例は存在しますが、公証人が遺言者に遺言内容の確認をし、遺言内容を理解しているか確認した上で、公正証書が作成されるため、有効性の高いものになります。(2)遺言書を紛失がない
遺言書の怖い点は紛失です。もしくは隠匿です。いくら法的に有効でも見つからなければ意味がありません。自身に都合の悪いものの場合、破棄しようとする人も珍しくないため、公証役場にて遺言書が保管されているのは大きなメリットとなります。(3)偽造を防止できる
そもそも、公正証書遺言は公証人が作成します。したがって偽造の心配がありません。もし、自筆証書遺言で偽造が疑われる場合は筆跡などから判断しなくてはいけなくなります。(4)自分で書かなくて良い
自筆証書遺言は、別紙の財産目録を除き、一言一句すべて自筆でなくてはいけません。一部でも他人が書いた形跡があると無効になります。公正証書遺言は自分で書く手間を省くことができますし、文字を書ける状態でない人が遺言書を作成する有効な手段でもあります。また目が見えない人でも利用できます。(5)すぐに遺産相続を開始できる
遺言の内容を理解していない者の遺言書を公証人は認証してくれません。公正証書遺言は作成され認証された時点でそれが本人の意思に基づき作成され、法的な有効であることが担保されています。そのため家庭裁判所の検認を受けることなく遺産相続を開始でき、名義替えの手続きも公正証書遺言の場合は、添付書面が簡略化されていることが多く、多くの名義替えをしなければいけない相続人の手続きの負担軽減にもつながります。以上のように公正証書遺言はメリットがいっぱいあります。デメリットをあえてあげるなら公正証書は公証センターの事前の確認や手続きに日数を要し、認証の費用もかかります。事案や財産の規模によってもかかる費用は異なりますので、一概にはいえませんが、専門家に直筆遺言書の作成を依頼した場合と公正証書遺言での作成を依頼した場合の費用の違いは大きくはなく数万円くらいの違いであることがほとんどの印象に思えますので、個人的には公正証書遺言をお勧めします。
しかし、家族関係も複雑でなく、特異な事情もなく、単純な遺言内容である場合は法的に有効な直筆遺言をしっかり作成し、法務局保管制度などを利用することもいいでしょう。
財産の規模や家族構成や特異な事情等、考慮してどちらがいいか検討する必要があります。